何年か前の
ある秋の日
都心のビルに埋もれた緑道に
帰る家のない男の人が腰を掛けて
虚空に向かって
終わりのない独り言を
大きな声で語っていた。
なぜだか急に
きれいな紅葉を探して
その人の膝の上に
そっと置いてみた。
話すのを止め
戸惑うように紅葉を取り上げると
その人はやがて
顔いっぱいに
柔らかな笑顔を向けてくれた。
なぜだか思い出して
涙がこぼれた そんな日。